アスベストとは
アスベストとは石綿(いしわた、せきめん)と呼ばれる天然の鉱物繊維の総称で、蛇紋石系のクリソタイル(白石綿、温石綿)と角閃石系のアモサイト (茶石綿)、クロシドライト(青石綿)、アンソフィライト(直閃石)、トレモライト(透角閃石)、アクチノライト(緑閃石)の全6種類が定義されていま す。
アスベストは、紡績性、抗張力、耐摩擦性、耐熱性などに優れた工業的特性を持ち、また、比較的安価であることからクリソタイル、アモサイト、クロ シドライトの3種類が建築材料として広く使われていますが、最近になってトレモライト等の検出事例も報告されるようになってきました。
アスベストの繊維は、極めて細く軽いため空気中に浮遊しやすく、人の肺に入ると15~40年の 潜伏期間を経て、肺がんや悪性中皮種などの病気を引き起こすおそれがあります。このため、アスベスト繊維を飛散させやすい吹付け材などが露出している場合 や、アスベストを使用している建築物を解体する場合などには特に注意が必要です。なお、アスベストを使用していた建築物の解体は、2020年頃にピークを 迎えると予測されています。
アスベスト含有建材の例 画像をクリックすると拡大表示されます。
アスベストに関する主な法規制と基準
アスベストを含有する建材については、製造・輸入・販売・使用、既存建築物の維持管理・増改築・解体、廃棄の各段階において、石綿障害予防規則や大気汚染防止法などに基づき、アスベストの周辺環境への飛散防止など適切な措置が図られています。
アスベストに関して、現在、設定されている主な基準と法規制の変遷は以下のとおりです。
種別
| 項目
| 基準値
| 根拠法令等
|
建材中
| アスベスト含有率基準
| 0.1 重量%
| 石綿障害予防規則など
|
空気中
| 敷地境界基準
作業環境基準 | 10 本/L
0.15 本/cm3 | 大気汚染防止法施行規則
作業環境評価基準 |
なお、アスベストに環境基準は設定されていませんが、WHO(世界保健機構)の環境保健クライテリアによると、世界の都市部の一般環境中のアスベスト濃度は、1~10本/L程度であり、この程度であれば健康リスクは検出できないほど低いとされています。
年号
| 内容
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昭和35年(1960)
| 「じん肺法」の制定
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昭和50年(1975)
| 「特定化学物質等障害予防規則(特化則)」の改正により、石綿5%を超える吹付け作業の原則禁止
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昭和63年(1988)
| 「作業環境評価基準」により、作業環境の管理濃度を2本/cm3に規定
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平成元年(1989)
| 「大気汚染防止法施行令・同施行規則」の改正により、敷地境界基準を10本/Lに規定
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平成7年(1995)
| ・「労働安全衛生法施行令」の改正により、アモサイト、クロシドライトの製造等禁止
・「特化則」の改正により、石綿1%を超える吹付け作業の禁止 |
平成15年(2003)
| 「労働安全衛生法施行令」の改正により、クリソタイルの使用等禁止
|
平成16年(2004)
| 「作業環境評価基準」により、作業環境の管理濃度を0.15本/cm3に改正
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平成17年(2005)
| 「石綿障害予防規則(石綿則)」の制定
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平成18年(2006)
| 「石綿則」等の改正により、石綿製品の定義を0.1重量%超まで拡大し、一部を除き、これらのアスベスト含有製品の製造等禁止
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平成20年(2008)
| 厚生労働省から、トレモライト等を含む石綿の分析調査の徹底等についての通達
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アスベスト含有製品の製造時期
代表的なアスベスト含有製品の製造時期等は以下のとおりです。
廃棄物分類
| 発じん性
| 建材の種類
| 製造時期
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廃石綿等
| レベル1
(吹付け材) | 吹付けアスベスト
| 1956~1975
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吹付けロックウール
| 1961~1987
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吹付けバーミキュライト(ひる石)
| ~1988
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レベル2 (保温材・耐火被覆材等)
| けいそう土保温材
ケイ酸カルシウム保温材など | ~1980
| |
ケイ酸カルシウム板第2種
| 1963~1990
| ||
煙突用石綿断熱材
| ~2004
| ||
石綿含有 産業廃棄物
| レベル3 (成形板等)
| スレートボード・フレキシブル板
ケイ酸カルシウム板第1種など | ~2004
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ロックウール吸音天井板
| 1961~1987
| ||
ビニル床タイル・ビニル床シート
| 1951~1990
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